インスタント焼そばを見る度に思い出すことがある。 いつ頃からインスタントラーメンが世の中に出始めて、そしてインスタント焼そばが 生まれたのか記憶が定かではない。 仮に50年前にインスタントラーメンが誕生したとすると、その数年後に焼そばが 出てきたはずである。 とは言っても当時は今とは違い、お湯を注いで3分待つのだよの世界ではなく、袋から 取り出した麺を鍋の煮立ったお湯に入れて、解きほぐすのだ。 ラーメンが出た時も衝撃があったが、焼そばも大いなる衝撃だった。 私が高校生だったある日、おふくろが泊まりがけの旅行に行くということで親戚の おばあちゃんに留守を頼んで行った時のこと。 学校から帰ると、そのおばあちゃんが夕飯は夕飯として、その前に何か食べるかと訊いてきたので、 「じゃあインスタント焼そばを」と答えて部屋に入り、着替を済ませてキッチンに戻った。 その間約10分。 ちょうどいい。 ダイニングテーブルに座ると、すぐに「はい、できたよ」とインスタント焼そばが出てきた。 「…?……??」 目に飛び込んできたのは、卍のような絵柄が連続で描かれたような噐。 どこからどう見てもラーメンだ。 「あれ?焼きそばって言ったけど」と私。 「焼きそばだよ」とおばあちゃんが見せてくれたのは、空袋。 確かに『やきそば』と書いてある。 そう。 おばあちゃん、焼きそばを知らなかったのだ。 インスタントは 全てラーメンなのだ。 おばあちゃんの中では焼きそばの存在自体が無いのだ。 焼きそばをすする。 まずい。 非常にまずい。 スープの味がしない。 (これなら初めからラーメンて言えば良かった) 後悔しきり。 でも、おばあちゃんに悪いから完食した。 うっうー!一覧へ