またまた小学生の頃の話。 当時我が家は、ある田舎町の駅前に住んでいて、おふくろが趣味と実益を兼ね 料理屋をやっていた。 もっとも会社の人たちが客の主体であり、ツケが増え、 中にはなかなか支払わない輩もいて大変だったらしい。 結局5年くらいで閉めることになるのだが……。 さて、そんなことだから毎日のように魚屋さんが、肉屋さんが御用聞きに来て、 そして配達をしてくれる。 いつしか肉屋さんのお兄さんと親しくなって、配達のついでに時間に余裕のある 時は私とキャッチボールをしたり、よく遊んでくれた。 ある夏の夜、どうやら肉の追加があったようで、私と妹と家の前の空き地で花火を やってるところへ顔を出した。 「おー、花火やってんのかぁ」と彼。 「あっ、肉屋のにいちゃん!」と我々兄妹。 「おっ、打上げ花火もあるじゃないか」と彼。 「うん。 でも恐くてできないの」と我々。 「よし、俺がやってやるよ」と彼。 まだ20歳になるかならないかの、ついこの 前まで少年だった肉屋のにいちゃん。 自分もやりたかったんだろう。 楽しそうに口笛を吹きながら、打上げ花火をセットした。 見ると、斜めにセット されてる。 「あれ? こんなに傾いてていいの?」と私。 「この方が面白いよ」と肉屋のにいちゃん。 いよいよ点火。 シュルシュシュルと勢いよく飛び出した花火。 (おー、すごい! きれい!!) と次の瞬間、なんと花火は駅の待合室に飛び込んでしまった。 「ヤバイ!」と叫ぶと同時に肉屋のにいちゃんは自転車に飛び乗って行ってしまった。 その後どうなったかは、実は記憶にない。 おそらく母にこっぴどく叱られたんだろう……。 アルバム「愛」に収録の「隅田川」なんて如何ですか?一覧へ