私はとにかく勉強が嫌いだった。 特別、外でってことでなくても遊びたくて 遊びたくて仕方がなかった。 小学校時代も宿題はほとんどやっていなかった記憶がある。 当時は今ほどテレビのチャンネルも多くなかったし、ましてや富山県の田舎で それこそチャンネル数は少なかった。 だから今にして思うと、いったい何を して遊んでたもんだろう? 不思議……。 さて、親父はまず家には居ないし、おふくろは商売をやっているから、私の 監視役はもっぱら姉だった。 姉は実に成績優秀で、先生の覚えも良い優等生で 私とは大違いであった。 そんな姉が毎日のように「ねえねえ、宿題やった?」と私に問いかけてくる。 私の答えはいつも同じ。 「うん。 やったよ」 それだけ答えると、また自分の遊びに熱中していた。 そんなある日の夜、私が居間で遊んでいると、いつものように姉の声がした。 「宿題したの?」 私はいつものように「うん。 終わってるよ」と答えた。 ところが、ところがである。 なぜかその日に限って姉がしつこく訊いてくる。 「本当に?」 「ホントだよ」と私。 「ふうん」と姉。 会話が終わったと思った次の瞬間…「じゃ、持ってきてよ。 私が見てあげるから」 (えっ?! まずいな。) 仕方がない。 ランドセルは廊下に放り投げてあったから、宿題を取り出して、 暗い廊下に座って、1問2問とノートに書き始めた。 「なにやってんの? 早く持って来なさいよ」と姉の追い討ちの言葉。 「うん」 それしか答えられない私。 そして、「ほーら。 そんなことだと思った」という声に顔を上げたら、目の前に 姉が。 いつ忍び寄って来たものか。 そのあと部屋に連れて行かれ、姉の監視の下宿題をやり、やがて母も合流して説教。 最後に母から姉への一言。 「明日からも見てやっとくれ」 (あちゃー!!)一覧へ