今はあまり見かけなくなったが、ミルク飲み人形が昔は流行っていた。 哺乳瓶でミルクを飲ましてやると、暫くしてオシッコをするので、おむつを 替えてやるというもの。 大した仕掛けではない。 体内の管を通って下から水が出てくるだけのこと。 女の子は大概持っていた。 私の姉も例外ではなかった。 楽しそうに毎日人形に話しかけては、ミルクを飲ませ、オムツを替えて遊んで いた。 そして本当に人形を大事にしていた。 ある日の夜、姉と私の間で大きなケンカが勃発。 理由はもちろん憶えては いないが、かなり激しいケンカだった。 なにせ4歳半の違いがあるので、口にしろ体格にしろ敵うわけがない。 どうにもならなくなった私は最後の手段に出た。 姉の大切なミルク飲み人形の哺乳瓶を持ち出して 「ようし、これにオシッコ入れてやるからな!」と叫ぶ。 「やれるもんならやってみなさいよ!」と姉。 「分かったよ!」と再び叫んで、私は哺乳瓶を持って外に出た。 トイレではなく外に出た。 追いかけてくるかな?と思ったら、全くその 気配はない。 仕方がない。 実行に移すしかない。 哺乳瓶の蓋を外してオシッコをほぼ満タンに入れた。 哺乳瓶が重くなり、温かくなった。 蓋をして家に戻って姉の目の前にかざした。 「キャー!!」と姉の悲鳴が響き渡り、次の瞬間私は突き飛ばされ小さなガラス戸に 頭から突っ込み、ガラスが砕け散った。 小学1年か2年の私が呆然としてるところへ母が来て、ケンカ終了。 二人ともこっぴどく叱られた。 姉よ、元気になってくれ。 リハビリはキツイだろうが頑張れよ。一覧へ