エイプリル・フールと云えば、今でも忘れられない思い出がある。 私の長姉は、4歳半違い、無類のいたずら好きだった。 よくもまあ、次から次といたずらが思いつくものだと感心した。 私も幾度となく迷惑を受けた。 親父は仕事の関係でほとんど家には居なかった。 そんなこともあり、おふくろが料理屋を営んでいた時期があった。 私の小学生時代である。 ある年の4月1日、姉の友人の家で私も含めて3人で遊んでいた。 記憶は定かではないが、おそらく学校を終えてから、その友人の 所に行ったんだろう。 時間が夕刻になった時に姉が言った。 「ねえねえ。今日エイプリル・フールだよね。 今から家に電話 して、お父さんの会社にラーメン注文しようか」 「えっ!? そんなことして大丈夫? それに電話の声ですぐばれるよ」 と姉の友人。 「大丈夫よ。 私声色うまいから」とニコニコ。 そして、即実行に移った。 友人の家の電話を拝借して、店に電話をする。 横で聞いてると、5つ ラーメンを注文した。 その後、3人で土間から表を眺めていた。 暫くすると、配達の自転車が表通りを走っていった。 「あっ、ほらほら行った行った!」とやや興奮気味の姉。 しかし、自転車が見えなくなってから急に心配になったのか、「大丈夫かなあ。 嘘って判るよねえ」 さらに「ねえ、あとで小遣いあげるからアンタがやったことにしてくれない?」 私を買収にかかってきた。 私は小学1年か2年。 若干小遣いという言葉に 心が揺らいだが、それ以上におふくろの怒る顔が大きくのしかかってきて、勿論 断った。 憂鬱な表情で帰宅。 姉はしこたま母から叱られていた。一覧へ