またまた落研の話。 当時年に2回合宿を行っていたことは既に書いた。 そして何でも洒落で済ませてしまうことも書いた。 ある年の合宿で。 車で合宿に参加した4年生の先輩がいた。 後輩は皆羨望の眼差し。 学生でマイカーを乗り回せる人はまずいない。 今でもそうは多く ないと思うが、なにせ40年以上前の話。 先輩の車を取り囲んで、口々に「すっごいなあ」と叫んでいた。 その先輩が合宿翌朝から、朝早く街へ出かけていった。 今と違い コンビ二はおろか、飲み物の自動販売機もそうはない。 仮にあったと しても、片田舎の民宿、街中よりも高く値段が設定されている。 朝食を済ませて、朝稽古前のゆっくりしてる時に、その先輩の声が。 「おーい、みんな牛乳飲むかい?」と言って30~40本牛乳瓶の 入っているケースを軒先にどんと置いた。 田舎の民宿の朝食ではまず牛乳も出てこないから、ほとんどが手を伸ばした。 「先輩! ご馳走様です! 有り難うございます」と笑顔で挨拶。 私も飲んだが本当に美味しかった。 しかし、次に出てきた先輩の言葉に全員耳を疑った。 「なに言ってんだよ。 金はもらうよ。 1本35円だから。 今財布を 持たねえのは、ノートにつけておくからな」 (えーっ、金取んのかよう!?) と思いつつも、それでも毎朝楽しみにしていた。 いよいよ合宿最後の朝、他の4年生が「あのさあ、あの牛乳、実は店で 30円で仕入れてんだよね」 「えー!!! そりゃないですよ」と声を揃えて、かの先輩にささやかな 抗議を申し入れたところ、先輩全く慌てず。 「当たり前だろ? だってさ、下の店に買いに行くのにガソリン代だって かかってるしな。 それにおまえら飲みたかったろ?」 「まあ、そうですね」で一件落着。 あの何も無い中での牛乳……本当に美味しかったなあ。 でも先輩。 数年前に60過ぎで亡くなっちゃった。 名物先輩で、卒業後も後輩の面倒見の良い方だった。一覧へ