落語研究会では当時(今もやってるかな?)年に2回合宿をやっていた。 何をやるかというと。 概ね1週間の合宿中に新しい噺を憶えるために 稽古を連日行い、最終日は公民館なりを借りては発表をするのだった。 その行き先は大概田舎の小さな市町村。 宿泊は民宿と決まっていた。 ある年の夏合宿。 結構大きな民宿だった。 海に近い場所で、稽古が 終わると海に出て泳ぐという感じで過ごした。 合宿3~4日めの朝、いつものように食事場所の部屋に行った。 「おはようござ……」??? なんか部屋の雰囲気がいつもと違う。 もっと朝日が差して部屋全体が明るいはずなのに……??? 他の連中も首をひねっている。 よーく見ると、窓ガラスにお札が何枚も貼り付けてあり、皆それぞれに そのお札を覗き込んでる。 お札は全てが濡れていて、どうやらガラスに 貼って干しているらしい。 と、そこへ4年の先輩がどやどやと入ってきて、真っ直ぐに窓ガラスへ。 口々に「うん。 少しは乾いたかな」と言いながら、食事の席に着く。 3年生以下は「なんですか? これ」と質問を投げかける。 「うん。 実は~」と話してくれた内容が以下。 朝のおつとめにトイレ……いや便所だな。 短パンの後ろポケットに 入れていた財布が落っこちたとのこと。 時代は40年以上前のこと。 しかも田舎の民宿。 トイレはいわゆる「ぼっとん便所」。 いろんな人の落としていったモノの上に、その先輩の財布が載っていた 光景を思い浮かべるだけで全員大笑い。 その時の泡を食った様子を 思い浮かべて大笑い。 そして、やっとの思いで財布を拾い上げて、中身を取り出して1枚1枚 丁寧に洗って窓ガラスに干したということだった。 とにかく食事をしながらのそんな話に全員が涙を流しながらの大笑いで あった。 「財布はどうしたんですか?」の問いに「もちろん捨てたよ」の答え。 ご苦労様でした。一覧へ