最近は滑舌が悪くても、お笑い芸人として立派に通用している人もいる。 一昔前までは考えられなかったことである。 以前は滑舌が悪いと「芸人 にはむいてないねえ。」なんて言われたもんだ。 時代の変化というのか、あるいは滑舌の悪さが逆に新しい笑いの種類に なってきたのか、いずれにしろ色々なパターンがあっていいんじゃない? 私はそういう芸風も好きだな。 さて2~3か月前のこと。 夜の飲み会への時間調整のため喫茶店に入った時のことである。 私のあとから入ってきたスーツ姿の若い二人が、今回の話の主人公である。 一人はスーツながらひげ面である。 彼らは私の二つ隣のテーブルに座った。 私はコーヒーを飲み、スマホのニュースを読んでいた。 すぐ近くだから 彼らの会話はいやでも耳に飛び込んでくる。 やがてウエイターが水を運んできて注文を尋ねている。 ひげの若者が言う、「ほっといて下さい。」 んっ?! ほっといてくれ? だってお茶を飲むために入ってきたんじゃないの? それを、ほっといてくれだなんて、なんという若者だ。 こうなると気になって仕方がない。 私はスマホどころではない。 さすがにウエイターもおかしいなと思ったのか、訊きなおした。 今度はゆっくりと、 「ホットケイキください。」 あははは。 彼の滑舌が悪くてホットケイキがほっといてに聞こえたのだ。 ホットケイキのトとケを詰まらせて言うと、そう聞こえてしまう。 あー、ビックリした。一覧へ