世の中には時期がズレる、遅れるということがままある。 私の頭にも時々、毛髪全体が後退するスピードについて いけない髪がある。 一本だけ取り残されて、実に寂し そうに、所在無げにヒョロッと残された髪を見るにつけ、 心の中で「頑張れよ。」と声をかけたくなる。 先日、この時期にも関わらず生き残った蚊を発見した。 夏本番の時とは違い、少し飛ぶ速度が遅い。 夏には何度か蚊に刺され、結構痒い思いをさせられたから、 にっくき蚊である。 暫く動きを眺めていた。 叩くチャンスを窺っていたが、 ずーっと飛びっぱなしなのだ。 よーし、ならば飛んでるどころを仕留めてやろう! 夏、俺の血を吸ったのはおまえじゃないけどね。 蚊を見つけたら退治したくなる、人間の習性、ごめんね。 再び飛んでいる蚊を凝視。 私の近くへ飛んでくるのを 待った。 きたぞー。 もうちょいこっちへ来い。 今だ! パチン。 両手を叩く音が部屋に響く。 手をそーっと開いてみる。 よっしゃ。 やったぁ。 血を吸っていない蚊の圧死した 姿が手のひらに広がっている。 うん。 時期外れの蚊は料理しやすいぞ。一覧へ