たまたま田舎に用があり、戻ってる時に、高校時代からの 一番の親友から電話が入った。 「久しぶりいー。」 と、つい陽気な声で出たところ、親父さんが亡くなって、 その日が通夜で翌日が葬儀という。 瞬間、親父さんの優しい笑顔が思い出された。 若い頃、何度も酒屋を営んでいたそいつの家に遊びに行き、 店から珍しい酒をかすめて飲んだ記憶が蘇った。 私が現在、東京に住まいをしてるので遠慮しながら、 「あのさー。 悪いけど、電報だけお願いできないかなぁ。」 ときた。 「何言ってんだよ。 お前の親父だろ? 今こっちに いるし、行くよ。 但し、申し訳ないけどスーツだよ。 弔電も打つから。」 と、すかさず答えた。 葬儀当日、セレモニーホールに着き、入口に目をやる。 友人が参列者を迎えている。 以前から多少調子が悪いとは 聞いていたので、友人も涙を見せず応対している。 私が近づき、「おい、大変だったね。」と声をかけた途端、 「あー、ダメだ。 お前の顔を見たらダメだ。」と言って、 横を向いてしまった。 我慢してた涙が一気に目から溢れ出た。 92歳という大往生ではあったが、やはり寂しかったのだ。 悲しかったのだ。 友情っていいね。 彼とは、やがてどっちが先に逝こうが、残った方が友人と して弔辞を言う約束になっている。一覧へ