手術翌日、先生の巡回があった。 テレビドラマとは違い、看護婦を1人だけ伴っての地味ぃーな巡回。 手には黒いA4サイズバインダーを持ち、いくつか質問があった。 「気分はどうですか?」-「はい、大丈夫です」 (うーん。 他に答え方が見つからない) 「おしっこは出ましたか?」-「はい、出ました」 「おならは?」 -「はい、ついさっき出ました」 (うーん。 本音は恐る恐るで、怖かったー、痛かったー) それから、少し症状の説明と以後の過ごし方に関する説明があり、 最後に「では、これが診断表です。 病名は大脱肛です」と言って、 診断表の複写をくれた。 そして、「じゃ、お大事に」と言い残して先生は病室を出て行った。 (またぁ、先生。 冗談きついなあ)と思いながら、診断表に目を落とす。 (えっ?!) そこの病名欄にははっきりと「大脱肛」と書いてある。 なにも「大」を付けることはないのに……大きかろうが、小さかろうが 脱肛は脱肛でしょ? んっ? そう言えば、昔スティーブ・マックイーン主演の映画で「大脱走」と いうのがあって、結構面白く、興奮しながら見た記憶がある。 脱走は脱走なのに「大」を付けた、それだけですごくワクワクさせるものがあった。 いやいや、病名は映画とは違うでしょ! にしても、「ダイダッソウ」と「ダイダッコウ」……似てるなあ。 先生、ホントに冗談きついぞ。 あは。一覧へ