すんでのところで電車に乗れなかったという経験を お持ちの方は多いと思う。 私も何度もあった。 荷物を持ち、駆け足で駅へ着く。 階段を2段ずつ 駆け上がる。 ホームに出て、まだ電車が止まってるのを見て、 (良かったぁ! 間に合ったぁ) とホッとした瞬間。 まさにその瞬間を待ち望んで たかのように……プシュ〜という、実になんの思い遣りも 感じられない、扉が閉まる味気ない油圧音。 乗り遅れた私は、一瞬、あっという表情を浮かべる。 直後ニヤリとする。 ニヤリとせざるを得ない空気が 漂うのだ。 (いやいや、別に無理に乗らなくても良かったんだ。 そこまで急いでいるわけじゃないから) なんとなく他人に、乗り遅れたことを悟られるのが 嫌なんだ。 他の人を観察してみる。 乗り遅れた人は、ほとんど同じ行動を取る。 十中八九、間違いない。 ニヤリとして何事もなかったかのように、もう少し歩を進める。 私の観察結果では。 そう、十中八九なのだ。一覧へ