小学生の頃は学校が許可した映画しか見ることが出来ないことは、なんとなく 昨日のこのブログで紹介した。 とにかくそれ以外の映画を観に行くことは 禁止されていた。 でもねえ、都会と違ってあちらこちらと足を伸ばせる状況は田舎にはない。 何しろ映画館のある他の町に行くにはローカル線の列車を利用するしかない。 大した小遣いをもらってない小学生ではどだい無理な話なのだ。 また当時の 田舎の小学生に列車に乗って…という発想がなかった。 必然的にどうしても 観たい映画がある時は、自分の町の映画館に足を運ぶことになる。 当時、怪獣映画が流行っていた。 古くは「ラドン」なんてのがあったが、これは 私の年代ではないため、よく分らない。 やがて「ゴジラ」が現われ、「モスラ」が 登場し、そのうち彼らが互いに闘うことになるのだが…。 その「モスラ」が町にやってきた。 蛾のおばけみたいなのがバサーバサーッと羽を 動かすと周りのものが吹っ飛んでいく。 たしか口から糸みたいなものを吹きかけて、 敵が動けないようにした…気がする。 いや、それは幼虫だったかな? どこかの島の洞窟にモスラの基地があり、そこには幼虫がいる。 要はイモムシだ。 私より10歳くらい上だが双子の歌手、ザ・ピーナッツという(当時は)可愛い歌手が 出てきて「モスラ~や、モスラ~」と歌うと、モスラの出動なのだ。 その「モスラ」が町にやって来た。 観たくて観たくて仕方がない。 友だちの家に 遊びに行くからと親にも嘘を言って、日曜日の午後1人で映画館に足を運んだ。 こういう時は1人で行動するに限る。 複数で行けば、それだけばれやすくなる。 小学5年生の子供ながらにそう思った。 入館時は誰とも会わなかった。 しめしめである。 楽しかったぁー。 面白かったぁー。 満足ぅー。 余韻を楽しみながら、うきうきと外へ出た。 後ろから声をかけられた。 振り向くと、まあまあ親しかったが、そこには口の軽いあいつが……。 (まずい!) と思い、「おーっ」だけ言葉を発して家に帰った。 そいつとはクラスが違ったので、翌日は顔を合わすことはなかったが、 2日目の放課後に担任の先生から呼び出しを受けた。 「おまえ、映画を観に行ったらしいな」 「ううん。 僕行ってません」 もう白を切るしかない。 「Iが観に行ったそうだが、おまえと会ったって言ってるぞ」 「いえ、僕は観てません」 (あのやろー、男のくせに口の軽いやつだな!) なんとか許されて、廊下へ出たら、あいつがニヤニヤしながら近づいてきた。 そして「怒られた?」と訊いてきた。 俺がモスラだったら、羽をバサーッとやって、おまえを吹き飛ばすところだぞ!一覧へ