今でこそテレビにいろんな子供番組が流れる。 男の子向け、女の子向け、幼児向け、 小児向け、ヒーローもの、アットホーム型、アニメあり、人形あり、着ぐるみ等々実に 様々である。 私が子供の頃はあるにはあったが、数とすれば少なかった。 だいたいテレビが一般的に 普及し始めたのが小学校の2,3年の時だからしょうがない。 映画もしかり。 年に1度小学校の講堂に全校生徒が集められて、当時の文部省推薦の 映画だけが許される、そんな時代だった。 そう言えば、町に1軒しかない映画館にも順次学年ごとに観に行った覚えがある。 「月光仮面」だった。 当時の男の子の間では「月光仮面」は本当にヒーローだった。 全身を白いコスチュームに…と云っても下はタイツだ…身を包み颯爽とバイクにまたがり …と云ってもスーパーカブという極めて一般的なバイクだった。 それでも白いマントをひるがえしてバイクで走る姿は羨望の的であった。 映画の中身はもちろん覚えてはいないが、悪人グループが次から次へと悪さをする。 これ以上はという時にヒーローの登場だ。 遠くから小さなバイクが段々こちらに向かってくる。 悪人を成敗しようと月光仮面が いよいよ登場だ。 頭には白いターバンを巻き、その額のところに銀色の三日月マーク。 そして今なら祭りの 夜店でも売っているようなサングラスをかけている。 例によってマントを翻しながら どんどん近づいてくる。 小学生で貸切になっている映画館は、待ってましたとばかりに子供の歓声が上がる。 「おー!」「わーっ!」「早く早く」「行け行け」とかいろんな声が飛び交う。 と同時に 満場の拍手。 勿論私も拍手をしている。 勧善懲悪……早く悪人を懲らしめて欲しいのである。 そして当然のように、月光仮面が1人で何人もいる悪人をやっつけてしまう。 またまた満場割れんばかりの拍手である。 なんとも時代を感じさせる、そして田舎の純粋な子供を感じる一幕だった。一覧へ