そう言えば、もうかなり前になるが津軽三味線の高橋竹山さんの コンサートに行ったことがある。 今の2代目の女性奏者ではなく 初代の高橋竹山。 もちろん津軽三味線の第一人者でもあったが、 津軽三味線のルーツ同様やはり盲目の方だった。 たった一人で1500人入るホールのステージの中央に。 椅子に腰掛けただけの高橋竹山がいる。 それだけで凄まじくもあり、 圧倒的な存在感がそこにあった。 実はその時に前座で出演していたのが 弟子であった、今の2代目高橋竹山だった。 そう、この存在感と演奏には大変感動もしたし本当に聞き入った。 ただ残念でならなかったのが、三味線となるとどうしても集まる観客は 年配者が多くなる。 これは仕方のないことで、あらゆる伝統芸能は 押し付けるものではなく、必ずどこかで惹かれるようになるというのか 興味が出てくるようになるものだと思っているのでさほど心配はしては いないのだが。 その会場のあちらこちらで咳き込んだり、タンを吐く音やらが交錯する。 これは開演前の話ではなく、演奏が始まっても状況はほぼ同じなのだ。 会場のあっちこっちで「ゴホンゴホン」「ゴー、ペッ!」こんな声と いうか音のオンパレードなのだ。 いよいよ演奏も進み「津軽じょんがら節」に。 これは基本の旋律はある ものの、途中で奏者のアドリブが入るのでオリジナリティが出てくる名曲 である。 奏者はその場の雰囲気を感じながら、アドリブを長くしたり短く したりして、時には時間の調整も行っているらしい。 ちょうどそのアドリブ演奏に聞き入っている時に、すぐ後ろの席の人が 始まった。 「ウォーゴボゴボ……ゴッホーン!」 もうやだ!一覧へ